ナイキのカーボンプレート搭載厚底高速レーシングシューズであるアルファフライネクスト%。その練習用シューズとしてのポジションにあたるシューズが2020年8月27日に発売されました。
正式なシューズ名は「ナイキ エア ズーム テンポ ネクスト パーセント」
アルファフライと同じくズームエアポッドが配置されており、高いクッション性と反発性能は練習用といえど本番レースでも十分に戦えるスペックです。
シリアスランナーだけでなく、サブ3〜サブ3.5のランナーにとっても本命シューズとして使えるテンポネクスト%をレビューします。
目次
テンポネクストパーセントの概要とターゲット
テンポネクスト%はレースシューズとしてのスペックを持ちながらも、日常のトレーニング用に設計され耐久性に優れた作りが特徴で、ナイキの最速シューズであるアルファフライネクスト%をベースに開発されています。
テンポネクスト%のターゲットランナーは二種類あり、一つは、メインレースではアルファフライを使用しているランナー。
もう一つのターゲットがアルファフライを履くレベルまではいかないけど、サブ3〜サブ3.5の走力を持つランナーの本命シューズとしてというポジションです。
アルファフライの練習シューズとして
一般的なランニングシューズの寿命は400〜600km前後で、この距離はそれなりに練習を積んでいるランナーであれば、1ヶ月〜2ヶ月で寿命を迎えてしまいます。しかしアルファフライは定価33,000円と可愛げない値段。1,2ヶ月の練習で履き潰してしまう事を考えると履くのに躊躇してしまいます。
とは言いつつアルファフライは独特な機能が詰まったシューズですから、練習でも同じような感覚で走り込みたいというのが本音。そういったランナーの為に、アルファフライの練習用としての立ち位置です。
サブ3〜サブ3.5ランナーの本命シューズとして
もう一つアルファフライまでは必要ないけど、厚底の恩恵を受けられる高速シューズが必要な方向け。
実際にテンポネクスト%で走ってみると、大本命シューズとしての性能をしっかりと持ち合わせています。
テンポネクスト登場前であれば、「ヴェイパーネクスト%とズームフライ3の関係」であったものが、「アルファフライとテンポネクスト」に切り替わったイメージでしょうか。さらにはズームフライ以上という位置付けで中間層のランナーの本命シューズとして人気を集めると感じています。
テンポネクスト%の特徴
Zoom Airポッド
アルファフライと同様にZoom Airポッドが2つ搭載されています。この二つのエアポッドを複合素材のプレートとソール素材で包み込んでいます。
アッパーにフライニットを採用
アッパー素材にはフライニットが採用されています。
この素材は通気性の良い素材であることも特徴。
細かな穴が空いていて通気性をしっかりと確保していることが伝わるかと思います。
また、アッパーの内側はスウェード素材になっておりスウェード素材のおかげでシューズ中での足ズレを防いでくれます。
独特の足を包み込むような感覚で足をしっかりと固定し、足のブレを防いでくれます。
複合素材プレートを使用
アルファフライとの大きな違いは、アルファフライがカーボンプレートを搭載しているのに対して、テンポネクスト%は複合素材のプレートが採用されています。
カーボンよりも柔らかな複合素材のプレートになっており、足に対して負荷がかかりづらいよう配慮されているとのこと。
耐久性とグリップを向上したアウトソール
写真はテンポネクスト%のアウトソール側と横から見たミッドソール写真です。
まずミッドソールは、前足部にズームXフォーム、ヒールにリアクトフォームが配置と、ズームXとリアクトがブレンドした作りになっています。
ズームXはナイキで最軽量かつ最もソフトで反発性に優れたフォームですが、その分耐久距離が落ちますので、要所でリアクトを配置することで耐久性もカバーしています。
またテンポネクスト%では、耐久距離とグリップを高めるために、アウトソールのラバーをアルファフライ ネクスト% と比較して多めに使われています。
それと合わせて軽さも確保するために、必要最低限なラバーの量に調整されています。zoom Air ポッドの周りが削られているのはデザインかと思いましたが軽量化にも貢献されているのでしょう。
下の写真はアルファフライとの比較。左がテンポネクストで、右がアルファフライです。
テンポネクストはヒール部分までラバーが配置されていますが、アルファフライはフォア部分のみの配置です。アルファフライはあくまでもフォアフット走法で走れるランナーを対象としたシューズであり、テンポネクストが幅広い層のランナーを受け入れるシューズであることがわかりますね。
テンポネクストのサイズ感(他メーカーと比較するときつい)
普段履いているランニングシューズは26.5cmなので、まず26.5cmを履いてみましたがきついです。全く足が入りませんでした。ワンサイズ上の27.0cmで全体的な包まれ感はジャストフィットでしたので、指先は少し余るけど我慢して履くという運用になりそうです。
ヴェイパーネクスト%やアルファフライも同様のサイズ感で、自分の中でナイキのランニングシューズは他のブランドよりワンサイズ上というのが出来上がっています。
重量
重さは27.0cmで264.5gでした。高速シューズとしては少し重た目に見えるかもしれませんが、フィット感が高いことと反発性などのシューズ性能が抜群に良いので、重さをあまり感じることはありません。
走行感
履いてまず感じたのは圧倒的に強いクッション性です。初めてネクスト%を履いた時に味わったようなバネ感が感じられました。
はじめて履く方であれば、「おおおっ」と感じるはずです。
走ってみるとZoom Airポッドが良い働きをしているのがしっかりと感じられ、走行の衝撃をしっかりと吸収するとともに次の動きに繋げてくれます。
地面に着地し、エアポッドが沈んでいくと同時に反発を得ていることが走っている最中に伝わってくる感覚です。
10km × 2本をペースを変えて20km走行
1度目のランでは10kmを2本、合計20kmを走行。
1本目の10kmはある程度のペースでテンポネクスト%の性能を引き出すように走行し、4:30/kmスタートのラストは4分を切るくらいのペースで走ってみました。
暑い季節でしたので、キロ4分前後で走るのは正直キツイのですが、テンポネクスト%では余裕をもって気持ちよくスピードを上げていくことができました。
また、テンポネクストはカーボンプレートではなく、複合素材のプレートが搭載されているのですが、このプレートの反発性も素晴らしいです。
ちなみにカーボンプレートと比べて跳ね方は柔らかい感覚はありました。
続いて後半10kmは、色々と試しながらジョグペースで走ってみたのですが、その中でヒールから足を落としたときにもzoom Airポッドの反発を味わえたのには驚きました。
もちろんフォアから入った時がzoom Airポッドの力を最大限に発揮できますが、ヒールから足を落とした時のzoom Airポッドとの連携も面白いです。
言葉で表現するのが難しいのですが、「かかと着地→衝撃吸収→前に重心が移動しつつAirポッドで跳ねる」そんなイメージでしょうか。
それでいて安定性の高さにも驚かされました。これだけの厚底シューズになると安定性も落ちるはずですが、配置のバランスが良いというか、柔らかいクッショニングはありつつも走っていてグラつきは少ないです。
少なくとも直線ではどれだけスピードを上げても不安定さは感じられないでしょう。とは言いつつ薄底の安定感の高いシューズと比べたらもちろん安定感は落ちますし、3:30/km前後まで上げて走っている時のカーブでは不安定さは否めませんでした。
もう一つ良いなと感じたのが、長距離の走行でも疲労が少なめに感じられました。
プレートが柔らかめに作られており、クッショニング性能が高いからなのかもしれませんが、20kmほど走っても他のシューズで走る時と比べて疲労感は少なく感じました。
短距離でのポイント練習
続いては皇居1周をビルドアップで走った後に850mのレペ(レペティション)を行ってみました。
こちらは最初の一周ビルドアップ走です。最後の2ラップは下り坂ということもありますが、4:07、3:42と気持ちよくスピードを上げて走れているのはテンポネクストの効果を十分に感じられるものでした。
続いて850m×3本、リカバリ6分でのレペ。
この850mレペは最近取り入れているメニューで、スピードとスピード持久力の底上げを狙っています。
ここでもテンポネクスト%の恩恵は十分に感じられました。自分の実力で、1kmあたり3:30を切るペースで850mを疾走するのは中々厳しいのですが、3本目までほとんどペースを変えられずに走れています。
テンポネクスト%の走り方(Airポットの恩恵を得る)
テンポネクスト%は、どんな走法のランナーでも幅広く受け入れますよ。でもフォアから着地して地面を蹴り返せるランナーにはzoom Airポッドの素晴らしい恩恵を得られますよという感覚のシューズ。
このZoom Airポッドをうまく活用することで、抜群の反発を味わえます。
なお、普段ヒールストライクで走っている方にとっては、zoom Airポッドの恩恵をもう少し味わえる走り方をしてみたいという悩みを持っている方も多いでしょう。
私自身、走り方をアドバイスするレベルではありませんが、ここを気をつけると自然とフォアよりになってzoom Airポッドの恩恵を味わえますよというポイントはありますので、簡単にお伝えします。
ポイントとしては、走る際に足を前に出すのではなく、お尻の下に足を落とす感覚で走ってみてください。
お尻の下でステップを踏むイメージです。
その上で体を前傾にしていけば自然とフォアでの走行になり、感覚を掴める様になると、直接地面を蹴って反発を得るのを体感できます。
ちなみにフォアフットでは感覚的には膝より前に足はでません。膝より前に出てしまえば、自然とかかと着地になってしまう事イメージつくのではと思います。
フォアフット走法で走るのはめちゃ簡単・フォアフット&真下着地で走る方法は?
上記記事にてフォアフットでの走り方について書いてますので、合わせてご覧ください。
テンポネクストの寿命・耐久性について
今回、テンポネクストのファーストインプレッション的なレビューをメインに書きましたが、実際に200km走行した状態、300kmほど走って寿命を迎えた際の状態や感覚については下記にまとめましたので、併せてごらんください。
まとめ
フィット感 | ★★★★★☆☆ | ナイキ特有の幅が狭い作りになっているためワンサイズ上のサイズをチョイスする必要があった。 素材による包まれる様なフィット感は大変良い。 |
クッション性 | ★★★★★★★ | クッション性こそがこのシューズの最大の特徴。これだけのクッションを味わえるシューズはあまり存在しない。 |
反発性 | ★★★★★★☆ | カーボンプレート非搭載のシューズであるのに関わらず、素晴らしい反発を出せるシューズであることに驚かされた。 |
軽量性 | ★★★★☆☆☆ | 27.0cmで264g。フィット感の良さから重さを感じる事はないが、機能性を最優先してこの数値は頑張っていると感じられる。 |
通気性 | ★★★★★☆☆ | フライニット素材により通気性が高く、快適な履き心地を実現している。アッパーの内側にスウェード素材もついているので、シューズ中での足ズレを防いでくれる。 |
グリップ性 | ★★★★★★☆ | フロント・ヒールともに広い面積にラバー素材のアウトソールを配置。横に流れるトラクションを施しており、高速レースに耐えられる高いグリップ性能を感じる。 |
安定性 | ★★★★☆☆☆ | フォアから着地しスピードに乗っている時の安定性はとても良い。高速走行時のカーブでの不安定さと、薄底で安定性の高いシューズと比較すると劣る。 |
耐久性 | ★★★★☆☆☆ | 耐久距離は300km前後。200kmを超えたあたりからクッション・反発性能の劣化を感じ始めるとともに、300kmを超えてくるとアウトソールが削れてズームエアポッドがむき出しになる。 |
冒頭で話した、アルファフライを本命シューズにし、テンポネクスト%を練習シューズにするのはコスパ面でもメリットあります。
アルファフライを履きこなせるシリアスランナーにとってはそういった使い方になるかと思いますが、実際に履いてみてこのシューズはサブ3〜サブ3.5ランナーがメインターゲットだと感じました。
スピード走から長距離走、そして本番レースまで幅広く対応できるので、マルチに履ける本命シューズとして、この一足を推したいですね。
これまでズームフライを履いていたランナーが、厚底の履き心地を維持しつつワンランク上の走行感を求める際にベストな選択になります。
シリアスランナーからサブ3.5クラスのランナーまで幅広い層で活躍してくれる、おもしろいシューズを開発したなと感じました。
2 件のコメント