アディゼロ匠戦シリーズの最新作、「アディゼロ匠戦7」です。
匠戦はアディダスのランニングシューズ「アディゼロシリーズ」の中でも最も薄く軽量なシューズ。「マラソンで結果を出すには薄底で軽いシューズがベスト」が定説だった時代(時代と言っても数年前まで)、軽量・薄底レーシングシューズの代名詞的な存在でした。
現在はマラソンで好記録を狙うのであれば、厚底・カーボンプレート入りシューズというのが定説になっていますが、現在でも短距離のスピード練習には最も適したシューズです。
アディゼロ匠戦7のレビューを、前モデル匠戦6からの変更点とあわせお伝えします。
目次
アディゼロ匠戦7レビュー
まずアディゼロ匠戦7のデザインや素材などの特徴を匠戦6と比較しながらレビューします。
全体的なデザインバランス
匠戦シリーズは、薄底・軽量シューズの代名詞的なシューズ。近年厚底ブームで盛り上がっている中、匠戦ならではのコンセプトをしっかりと守り続け、薄底・軽量にこだわり続けています。
サイドから見たディテールと薄底感
真横から見ていきましょう。
フロント側にアディダスの十八番芸であるブースト素材が搭載され、中間部からヒールにかけては、軽量ながら反発力をバランスよく実現するLIGHTSTRIKEが採用されています。
フロント側にブースト素材が採用されているということで、完全にフォアフットでの走行をイメージしたつくりになっていますね。
ちなみにかかと部分の一番分厚い部分で3cmほど。同社アディダスから発売されている厚底シューズ、アディオスプロで5cm、アディゼロジャパンで4cm程度ですから匠戦の薄さが際立ちます。
匠戦6とも比較してみます。シューズ全体の厚みや、素材の使い方に関しては匠戦6も匠戦7も変わりありません。
上から見たディテール
つづいて上からのディテールです。
匠戦シリーズは従来からスリムな印象がありますが、7になってもそのスリム感は変わっていません。語彙力なく恐縮ですが、シンプルにかっこよいですよね。
履き心地についてはこの先で紹介しますが、スリムだからと言ってシューズの中で足が窮屈にならないのが驚かされます。
匠戦6と並べておきます。
アウトソール
続いてはアウトソールです。アウトソールに使われている素材や形状は前モデルの匠戦6と同じです。
匠戦6からブツブツの出っ張り(DSP素材)が樹脂製からラバー製になり、グリップ性能は高くなったものの耐久性が落ちた気がしているのですが、匠戦7も同じ素材が使われているようです。
ちなみに匠戦のアウトソールは、150~180km程度走ると、下の写真のようになります。
耐久性に関しては正直悩ましいですが、短距離練習用と割り切るのが良いと思います。日々のジョグなんかでは絶対に使えません^^;
ちなみに匠戦6と同じであれば、雨天時のグリップ力はかなり下がります。天候の良い状態では素晴らしいグリップ感を生み出す匠戦のアウトソールですが、天候に左右されること、耐久性は低いことは購入前に知っておくと、購入後のダメージは少ないかと思います。最大のネガティブポイントです。
アッパー
続いてはアッパーの進化。アッパー素材は大きく変わりました。
下の写真が匠戦6と比べた画像ですが、触った感触は匠戦7のほうが薄いですし、通気性も高そうです。
さらにクローズアップしてみます。
匠戦6は少し太めの糸感があり繊維も硬いです。匠戦7のメッシュアッパーは繊維が細かく、本当に細かな穴の開いたナイロンのような素材です。
まだ雨天時に走れてませんが、匠戦6よりも雨を弾きそうな感覚があります。
ヒールカップ
ヒールカップ部分も匠戦6からアップデートが入った部分で、カップの厚み自体が薄くなりました。匠戦6が黒くて見づらいですが、ひもを通す部分まで見ていくと、違いが伝わるかと思います。
匠戦6と匠戦7の重さの比較
両方とも26.5cmですが、匠戦7の方が10gほど軽量化されています。
アウトソールや形状はほとんど変化がありませんので、軽量化できた理由はアッパー素材の進化部分が大きいのではと感じます。
このクラスでの10g強の差ってかなり大きいです。
アディゼロシリーズのフィットシステム
写真では見づらいのですが、アディゼロ匠戦6の時代から、シューズ内部の構造が大きく変わっています。
この構造のアップデートは匠戦だけでなく、ジャパンやボストン、そしてプロなど他のアディゼロシリーズも同じなのですが、シューズの中に足を包み込むようなパーツが配置されており、よりフィット感を高めています。
アディオスプロが明るくて見やすいので写真を置きますが、シューズの内部に足を包み込むような素材が入っていること伝わるはずです。匠戦もこのようなイメージです。
アディゼロ匠戦7の履き心地
さて、アディゼロのフィットニングシステムについて説明したところで、匠戦7の履き心地についてお話します。
匠戦6で採用されたフィットニングシステムは、確かに足を完全フィットさせる意味では面白い工夫だと感じましたし、他のブロガーさんやユーチューバーさんのレビューを見ていると評価も高いものでしたが、私自身の感想としては正直履きづらさを感じる部分もありました。
まずシューズに足を入れづらいですし、シューズを履いた際に、フィットニングシステムのポジションにバラツキが生じてしまい、フィットしないと散らかるみたいな感覚です。
ついでに匠戦シリーズは細身なので、足の幅が広い人には履きづらいみたいな。
このあたりの問題はアディダス側でも理解していたのでしょう。
今回の匠戦7ではフィットニング素材の形状や配置が調整されており、匠戦6で感じたような履きづらさはありませんでした。
それどころか、今回のアディゼロ匠戦7は僕の足に合わせてきたのではないか?と思えるレベルで高いフィット感があり、シューズが足にピタリと吸い付いてきているかのような感覚にも陥りました。
匠戦7の走行感
匠戦7の走行感についてですが、匠戦6から大幅に増したフィット感と10g強の軽量化によって、走行感はより良いものになりました。
匠戦シリーズの走り心地は特徴的で、圧倒的な反発力の中に程よいクッショニングがあるイメージ。アルファフライなどの厚底カーボンシューズがトランポリンの上を走っているようなクッション・反発であれば、匠戦は、鉄板の上にクッション性のあるラバーを敷いて、その上を走っているような感覚です。
薄っぺらいシューズなのに、フロントに敷いてあるブースト素材のおかげで柔らかいクッショニングも得られるんですよね。
とにかく軽くて、シューズ本来の反発を貰えるので、足がよく回り転がっていくイメージが掴めますし、よく回せます。
私の走力だとキロ3:40~3:50前後(1kmインターバル時)での走行が本当に心地よく、あれ?このスピードってこんなに楽だったっけ?と思うレベルです。
もちろんスピードを出すだけの力を使っているため、疲労度も高く長距離には向きませんが、200m、400m、800m、1000mといったレペやインターバル練習、5~10kmまでのレースには素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれます。
まとめ
私、匠戦6に関してそこまでよい印象は持っておりませんでしたが、匠戦7では6のネガティブポイントがきちんとアップデートされており、匠戦6は、匠戦シリーズがより良いシューズへと進化していくための成長痛的な立ち位置だと感じられるほどです。
アウトソールの耐久性という観点では、改善されたポイントは見られなかったため、匠戦7も150~200km程度で寿命を迎えると思いますが、1kmを200本走るシューズ、400mを500本走るシューズというようにあくまでスピード練習用に特化したシューズと割り切れば、匠戦7に敵うシューズはあまり見当たらないはずです。
普段の練習では軽量・薄底シューズでしっかり足を鍛え、本番レースでは厚底を使う。そんなランナーに向いたシューズだと改めて実感しました。
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