ナイキのヴェイパーフライネクスト%にて一気に火がついたカーボンプレート搭載・厚底ランニングシューズ。
ヴェイパーフライが登場するまでは、スピードの出せるシューズといえば軽量薄型のシューズが定説でしたが、ネクスト%にてその概念は崩れ去り、今では多くのシリアスランナーがカーボンプレートを搭載する厚底シューズを履いています。
また、2019年まではナイキの独壇場でしたが、その他のシューズブランドもカーボンプレートを搭載したシューズを開発し、現在、私の知っている限り10のブランドがカーボンプレートを搭載したシューズを履いています。
カーボンプレートを搭載したシューズの歴史と、現在購入可能な搭載シューズ10ブランド11足を紹介いたします。
目次
厚底・カーボンプレート搭載シューズの歴史
カーボンプレート搭載・厚底による最速ランニングシューズの歴史を簡単に振り返ります。
初代ナイキヴェイパーフライ4%
厚底・カーボンプレートによるランニングシューズは、2017年7月にナイキから発売されたヴェイパーフライシリーズの1作目「ヴェイパーフライ4%」に遡ります。
ズームXフォームという厚底でクッション性のある素材と合わせ、ミッドソールに内蔵されたカーボンプレートにより高い反発を生み出す画期的なシューズでした。
シューズの名称に付いている「4%」は、それまでナイキが発売していた最速シューズ「ズーム ストリーク 6」よりも、ランニング効率が平均4%改善されたことから名付けられたもの。ヴェイパーフライ4%の圧倒的な性能から、ランナー界隈にて注目を浴びました。
メッシュ素材からフライニット素材にアップデートされたヴェイパーフライ4% フライニット
2018年9月にアッパー素材がメッシュ素材からフライニット素材へと変更された『ヴェイパーフライ4% フライニット』が登場。 初代ヴェイパーフライ4%では、足幅が細いランナーにはゆるく感じる部分もありましたが、アッパー素材が変更されることによってフィット感が向上しました。
しかしヴェイパーフライ4%には大きな弱点もありました。
一つは耐久性が低く、カーボンプレートの劣化により走行距離160kmで寿命を迎えてしまうこと。フルマラソン4回走れば寿命を迎えてしまう耐久性でありつつも値段は28,080(税込)ですから、1マラソン7,000円のシューズとして高すぎるといった物議をよく目にしましたね。
当然ですが一般市民ランナーが練習で履けるようなシューズではありませんでした。
またヴェイパーフライ4% フライニットは、水に弱いのも弱点でした。シューズが雨に濡れるとニット素材が水を吸収してしまい、「ただの重たいシューズ」に成り下がってしまうことが話題になったことを覚えているランナーもいらっしゃるでしょう。
このような弱点と合わせて転売による高値取引されてしまい、欲しいけど買えないランナーも多かったのではないでしょうか。
大幅改良されたネクスト%で一気にブーム到来
2019年、シリーズ3作目となる『ヴェイパーフライネクスト%』が登場します。
これまでのヴェイパーフライシリーズの課題が一気に改善されるとともに、ナイキの宣伝効果によって、「厚底・カーボンプレートシューズ」がランナー界隈だけでなく一般市民にも多く知られることになりました。
改良部分を簡単に説明すると、ヴェイパーフライ4%と比較してズームXフォームが約15%増えて、よりランニング効率の高いシューズに。
アッパーに採用されているのは、ヴェイパーウィーブという通気性に優れた新素材。サポート力を維持しながら軽量性を追求したヴェイパーウィーブは、驚くほど軽く、フォームの量を約15%増やしているにも関わらず、シューズの重さは『ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット』と同じにすることにも成功したのです。
また、「ヴェイパーウィーブ」は水に強いことも大きな特徴。フライニットと比較すると約93%水を吸収し辛くなり、雨天時にアッパーが水を吸収してシューズが重くなってしまうということが防げるようになりました。アウトソールの改良も加えられて、水が含んでシューズが重たくならず滑りづらいという雨天時でも走りやすいシューズが完成しました。
それと合わせて耐久性も大幅に改良。ヴェイパーフライ4%が160kmの寿命であったのに対し、ネクスト%では400kmまで耐久性を引き上げて、一般的なレーシングシューズと同等の耐久性を手に入れたのです。
ナイキの広告戦略により厚底ブーム到来
2019年9月15日、東京オリンピックの代表を決めるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が開催されました。
すでに厚底・カーボンプレートシューズの性能の高さはランナー界隈では有名になっていましたが、ナイキはMGCにてネクスト%の最新カラーであるブラストピンクを投入。
MGCは東京オリンピックの代表を決めるレースですから、マラソンファンだけでなく一般市民にも注目されます。
そこにナイキから提供を受けたMGC出走ランナーがピンクブラストのネクスト%を履いているということで、「みんなピンクのシューズを履いている」とお茶の間でも話題になり、多くのメディアでも取り上げられました。
その後、多くの主要レースでランナーの大半がネクスト%を履いていることから、厚底・カーボンプレートシューズの人気ぶりは誰もが認めるものとなりました。
また、2020年1月の箱根駅伝では、青山学院がアディダスからナイキに乗り換えたこと、多くの区間でネクスト%で区間新記録が出たことで、「記録が出れば厚底のおかげ」とドーピングシューズのようにも言われました。
ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%
ネクスト%が注目を浴びている中、2019年10月にナイキは次の時代に向けてのイベントを投下します。
「INEOS 1:59 Challenge」というイベントで、世界記録ホルダーのエリウド・キプチョゲが人類初のフルマラソン2時間切り(1時間59分台)に挑戦するというもの。
キプチョゲは、このレースでネクスト%の次世代モデルである「アルファフライ」のプロトタイプを履いて出走。結果は、1時間59分40秒という驚異的なタイムでゴールし、未公認でありながらも2時間切りという偉業をはたしたのです。
アルファフライ ネクスト%の特徴は、2つの新しい「ナイキズームエアポッド」が搭載され、改良された「カーボンファイバープレート」と増量した「ズームXフォーム」により、エネルギーリターン、クッショニング、安定性がより高められています。
2020年3月に開催された東京マラソンでは、大迫傑選手がアルファフライ ネクスト%を着用し、2時間5分29秒のタイムでマラソン日本新記録を樹立するとともに、東京マラソンへの出走チケットを手に入れました。
東京マラソンが開催された3月1日、ナイキはアルファフライ ネクスト%をナイキのアプリ上で購入条件付きで先行販売。その購入条件は、過去2年間にフルマラソンで男性2時間50分以内、女性3時間40分以内で走った記録がNRCアプリ内にあるランナーのみが購入権を得られるというものでした。
ナイキが圧倒的人気を誇る中で他ブランドは?
さて、ヴェイパーフライ4%の登場以来、着実に厚底カーボンプレートシューズのシェアを伸ばしていったナイキですが、ネクスト%にてその地位は圧倒的なものとなりました。
2019年9月MGCでは男子出走選手30名のうち16名がネクスト%にて出走、2020年1月の箱根駅伝では、出走210選手のうち177人(着用率:84.3%)がナイキを履いていたという記事が残っています。
箱根駅伝ではこれまでアディダスとの契約をしていた青山学院のランナーもナイキに乗り換えたことが話題になりましたね。
シェアを奪われてしまった他のシューズブランドが黙っているわけがありません。
2019年7月にHOKA ONE ONE(ホカ オネオネ)が、カーボンファイバープレートを搭載した「CARBON X(カーボン エックス)」を投入。各ブランドも水面下で高速シューズの開発が進み、現在ではほとんどのブランドからカーボンプレートが搭載されたランニングシューズが発売されています。
それでは各ブランドから発売されているカーボンプレート搭載シューズを紹介します。
ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%
カーボンプレート搭載シューズの大御所として紹介すべきはカーボンプレート・厚底シューズブームを巻き起こしたナイキの最新モデルであるアルファフライ ネクスト%。東京マラソン2020で日本記録を更新した大迫をはじめ、他トップ選手も着用していた「ナイキ」の最新モデルです。
アルファフライの特徴は、前足部に2つ配置された「Zoom Airポッド」。「ネクスト%」より高い反発性を得られるクッションテクノロジーで、蹴り出す力をサポートしてくれます。
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
4%からの改良によりカーボンプレート・厚底高速シューズとしてブームを巻き起こしたモデル。軽量性とクッション性に優れた「ナイキ ズームX」フォームとフルレングスのカーボンファイバープレートの組み合わせにより、並外れたエネルギーリターンを生み出します。
アッパーに使用された半透明の「ヴェイパーウィーブ」素材は、通気性が良く、フィット感も素晴らしい素材です。
アルファフライと並列で発売されています。
【ナイキ ズームX ヴェイパー フライ ネクスト% レビュー】リズムで跳ねるように前にグングン進む最強の爆速シューズ
アディゼロ アディオス PRO
世界トップクラスのマラソンアスリートである ジョイシリン・ジェプコスゲイやロネックス・キプルトとともに、ペースアップしながらより遠くまで走る、ランニングエコノミーを向上させるシューズを開発。
屈曲剛性、エネルギーリターン、重量削減、および設計形状などを再検証して創り上げた一足です。ナイキのアルファフライの対抗馬シューズとして履いているランナーも多い印象です。
アディダス adizero Pro(アディゼロプロ)
アディダス初となる「CARBITEX カーボンプレート」を搭載し推進力を強化したシューズ。
アディダスがトップアスリートたちとコラボレーションして開発。非常に軽いメッシュアッパーの内側にフィットシステムを搭載し、足をしっかりと固定。柔軟性に富むLightstrikeクッショニングとクッション性と反発性を両立するBOOSTを組み合わせて、キビキビとした快適な走りを導きます。
CARBON X(カーボンX)
長距離レーサー向けとして位置付けられた「CARBON X」は、トレーニングとレースの両方に適したデザインで、前モデルと同様に高い推進力を発揮します。
反応が良く反発性の高いカーボンファイバープレートとアグレッシブなメタロッカーを搭載したこのパフォーマンスシューズは、記録への挑戦の強いパートナーとなります。
CARBON X2(カーボンX2)
カーボンX2は、前モデルと比較して幾つかのアップデートが入りました。
まず後方のせり出しと二股に分かれたヒール形状による着地時の安定感が向上しぶれずに走行が出来るようになった事。アッパー素材にエンジニアードメッシュが採用されたことにより通気性が高まった事。
シュータンの構造が変わり、足全体を包み込むかのような一体感で、高いフィット感が得られるようになっています。
合わせて若干の軽量化も図られています。
ROCKET X
ホカがこれまでに発売したシリーズの中で最もエネルギッシュなシューズの1つである「ROCKET X(ロケット X)」は、エリートアスリート向けの軽量で非常に反応と反発性が良いレース向けシューズ。
ホカのラインナップの中で最軽量のレーシングフラットであり、あらゆるスピード(ペース)に対応できるこのシューズは、長年開発が進められ、満を持しての登場。
ROCKET Xはスピードに特化したモデルとして、CARBON Xと同じ反発性の高いカーボンファイバープレートを使用し、素早く効率的で推進力のある走りを実現します。
ROCKET Xを履けば、これまでにない最高のスピード感のある走り心地にアドレナリンが出るほどの興奮を味わうことでしょう。
ホカ オネオネ CARBON X-SPE(カーボン X-SPE)
レースでの耐久性を誇るCARBON X-SPEは、CARBON Xと同様のカーボンファイバープレートと、ホカ オネオネ独自のメタロッカー構造とのコンビネーションにより、推進力と反発性を提供。
CARBON X-SPEは、カーボンプレートの上にFly Foamを、プレート下にはラバーEVAを採用したPROFLY X構造を採用。柔らかなエンジニアードメッシュのブーティに包まれたタンのない快適でシームレスなフィット構造。柔らかく、安定した、反発力のある走り心地を実現します。
on Cloudboom(クラウドブーム)
on初のカーボンファイバー搭載シューズ。
Cloudboomは、強力な爆発性とスピードを極める、カーボンファイバーを注入した新しいSpeedboardを特徴。またHelionスーパーフォームによる初めての2層CloudTec開発に成功。Speedboard上下のダブル機能で唯一無二のフィット感をもたらします。
【On Cloudboom レビュー】反発をリアルに感じられるバネ感に感動・初めてのカーボンプレートシューズにもおすすめ!
アシックス メタレーサー
弓状のガイドソールテクノロジーに、軽量のカーボンプレートを搭載。ソールの形状を維持し重心の移動を促すことで、蹴り出しのスピードを高め、勝負所の爆発力へつなげます。
またミッドソールには軽量でありながら弾性もあわせ持つFLYTEFOAMを採用。従来のレーシングモデルよりもフォームを増量することで、足に伝わる衝撃を緩衝しつつ、優れた反発性を発揮します。アウターソールに採用されたASICS GRIPとWET GRIP RUBBER SPONGEが、濡れた表面でも優れたグリップ力を発揮し、接地からつま先までの駆動力をサポート。
アッパーの斜め裁断メッシュと水抜き穴で、通気性を高め、レース中の軽量感を促進しつつ、エネルギーロスの少ないランニングをアシストします。
ミズノ WAVE DUEL NEO(ウェーブ デュエル ネオ)
ミズノ史上最高のエナジーリターン素材「MIZUNO ENERZY」の中でも最軽量の「MIZUNO ENERZY lite」をソール全体に採用し、少ない衝撃で高い反発性を実現。
さらに、陸上スパイクにも採用されるミズノ独自のプレートが反発性を更に向上させた、ミズノ史上最高のレーシングシューズ。
ニューバランス FuelCell TC(フューエルセルTC)
マラソンとトレーニング、両方のシーンで活用できるように開発された「FuelCell TC」。
高い反発弾性を発揮するFuelCellミッドソールに、剛性を高めるフルレングスのカーボンファイバープレートを組み合わせることにより、高いランニングエコノミーを発揮するのが特徴。
耐久性と安定性を高めるアウトソール前足部のラバー、滑らかで通気性の良いメッシュアッパーを採用。ウィズサイジングにより、足長だけでなく足囲(甲周り)でもサイズを選べるのでニューバランスならではの履き心地の良さとフィット感を体感できます。
FuelCell RC ELITE
FuelCellシリーズの中でもよりランニング強度の高いランナーに対応し、最高峰のエネルギーリターンを備えている「FuelCell RC ELITE」。
軽量かつ高反発のミッドソールFuelCellフォームに、カーボンファイバープレートを組み合わせたシューズで、フルマラソンのレース用シューズとしてアスリートに向けて開発されたスピードレーシングシューズです。
ブルックス HYPERION ELITE2(ハイペリオン エリート2)
アメリカで高いシェアを誇るランニングシューズブランド「BROOKS(ブルックス)」からも、カーボンプレート搭載のシューズが登場。
トップランナーとともに4年の歳月を経て開発した待望のトップモデルであるHYPERION ELITEをさらに改良し、ミッドソールに、軽量かつ抜群の安定性、反発力を合わせ持つ素材「DNA FLASH」と可変式カーボンプレートを搭載。ひと味違う安定感とスピードを体感できる渾身のスピード系ハイエンドモデルです。
サッカニー エンドルフィン プロ
サッカニーは日本では知名度は低いものの、アメリカで120年以上続いている古いブランドで、アメリカで知らない人は居ないほどのシューズブランドです。
エンドルフィン プロは、軽量かつ耐久性に優れるS字カーボンプレートの搭載による反発力と推進力。新素材(軽量で反発性に富むPWRRUNPB)によるクッショニング。これらの要素を効率よく発揮させる SPEED ROLLテクノロジー。数々の機能を搭載したサッカニー史上最速のランニングシューズとしてデビュー
デサント GENTEN-EL(ゲンテン エリート)
走ることへの「GENTEN(原点)」を追求し、地面を蹴る力を無駄なく安定して推進力に変換することにこだわった、「速さ」を求めるトップランナーの為のスピードシューズ。
ランナーの足を研究し尽くしたラスト(靴型)を用いることで包まれるようなナチュラルなフィット感を実現。また独自の底面形状から生み出されるドロップと薄底カーボンプレート、高反発ソールによって力を地面にダイレクトに伝えることができ、推進力と安定感の両方を実現したモデルです。