アディダスが誇るレーシングシューズ「アディゼロ」の中で、最もシリアスランナー向けモデルであるアディゼロ 匠戦6(adizero sen takumi 6)。
匠戦6は、従来の正統派スピード型ランニングシューズの特徴である軽量・薄底をより進化させたシューズ。近年は速く走れるシューズといえば厚底・カーボンプレートのイメージが強くなっていますが、匠戦シリーズも素晴らしいスピード型シューズです。
私の中での匠戦は、距離としては〜10km前後までの短めの距離で高速レースを展開したいとき、また、走力を上げるためのトレーニングにもベストなシューズだと感じています。
匠戦5からアップデートされた点も含め、匠戦6の走行感をレビューします。
アディゼロ匠戦6の後継モデルである匠戦7が登場しました。匠戦7のレビュー記事も参考にしてください。
目次
アディゼロ匠戦6 レビュー
同じ匠戦でも前モデルの匠戦5と今回の匠戦6とでは大きく変わりました。全く別物のシューズと言って良いレベルです。デザイン、機能部分、履き心地など、どのようにアップデートが入ったのか見ていきます。
ミッドソールの仕様が大きく変わった
新素材LightStrikeを採用
パッと見て違いの分かる部分ですが、ミッドソールの素材に変更があり、これまでの趙薄底シューズから多少厚みのあるシューズになりました。
匠戦5のミッドソールにはEVA素材が使用されていましたが、匠戦6ではLightStrikeという新しい素材が使用されています。このLightStrikeを採用し後足部の厚みが大幅に増しています。
このLightStrikeという素材、一般的なEVAよりも40%軽量ながら同等の反発力を保つとのことで、安定性が高く、着地時の横ブレが少ないのが特徴です。スピードを上げた際に着地をしっかりサポートしバランスを崩しにくくなっています。
ブーストの量も増量
ミッドソールの前足部ブースト(BOOST)部分についても使用されているブーストの量が増えています。これまでの匠戦(写真左側)であればブーストの周囲を別の素材で覆っていましたが、匠戦6ではブースト素材の下はそのままアウトソールといった作りに変更されていますね。
今回アウトソールとブーストがダイレクトに重なったことで、よりブーストを感じられる走行感になりました。
LightStrikeとブーストによるミッドソールのアップデートによって、クッショニング性能と反発性能が大幅に向上したといって良いでしょう。
アウトソールも大きくアップデート
匠戦の特徴であるDSP素材(粒々のもの)がこれまでプラスチック素材であったのに対して、ゴム素材への仕様変更がありました。この仕様変更によって足を着地して蹴り出す際に粘りと柔らかさを感じるようになりました。
DSPの配置形状も変わっています。前モデルは中足部までDSPがついていましたが、匠戦6では中足部のDSPが無くなり、よりフォアに寄った作りになりました。
また写真を見て分かる通り、シャンクも大きくなりましたね。実物や写真ではみることができませんが、シャンクは爪先まで伸びるようで、前足部のねじれも低くなり安定して走れるようになったとのことです。
アッパー素材
続いてアッパー素材ですが、軽量で通気性の良いセラーメッシュが採用されており、また、内側を覗いてみると、シュータンから繋がるバンドが入っていて内部を固定される工夫がなされています。
具体的に写真でお伝えすると、
シュータン周りがバンドで覆われています。
この変更によって、シューズに足を入れ辛くなったように感じますが、入れ終わった後のフィット感は抜群で、走り始めるとシューズの中で全く足がぶれる様子が一切なく、前モデルよりもフィット感が高まっていると感じ取れます。
前足部の「反り返り」にも大きなアップデート
続いてシューズフロント部分の反り返りやすさも変更が入っています。匠戦5だと一定の力を与えてあげると写真のように反り返るのですが、匠戦6の場合は同じ力ではなかなか反り返りません。
非常に硬めの作りになっているのが伝わります。
走行時に踏み込む力をかければ、自然に反り返っていきますが、これまで以上にそれを真っ直ぐに戻す藩閥力も強くなったということ。イメージ的には、硬めの強力なバネでシューズ全体で強い跳ね返りがあるといった感覚かもしれません。
強いバネが備わった=良い印象もありますが、それだけかかる負担も高くなるわけで、筋肉疲労という観点では相当の代償はあるのではと感じます。
シューズ全体の重量は増した
さてこれだけのアップデートが入れば気になってくるのはシューズの重さとなるわけですが、匠戦5と比べてかなり重たくなりました。
写真は、匠戦5 26.0cmと匠戦6 26.5cmの重さ比較となりますので、26.0か26.5かの違いはありますが、30〜40gの差があります。同サイズであれば20〜30g、匠戦6の方が重たくなっているといって良いはずです。
ただし、フィット性能が高くなったので、実際に履いて走ってみると重さを感じることはありません。
履いた瞬間、「やっぱり匠戦軽いな〜・匠戦5と比べたらさらに軽くなっているのかな?」と感じたくらいです。
最近のランニングシューズの傾向として、重量は増えるが性能や履き心地を改善させることでトータルで走りやすくする方向性に向かっているのかもしれませんね。
サイズ感と履き心地
匠戦5と比べて、縦には大きくなったような感覚はありますが、他のブランドと比べると横幅は細身で正直狭いです。今回シュータン周りのサポートが入ったこともあり、より狭めに感じるようになりました。
私は楽天セールが行われていたタイミングで購入したので、普段通りの26.5cmをチョイスしましたが、初めて足を入れたときはキツくて本当に足を入れられるのか?と驚きました。
長さとしては26.5cmで少しゆとりがある状態なので、現在は紐を緩めて幅にゆとりを持たせるような履き方をしています。
匠戦5と同じでイメージしてしまうとサイズが合わないといったことにもなりかねませんので、最初は店頭で一度試し履きをしてみるのが良いかもしれませんね。アシックスのシューズなどに慣れている方であれば、最初からワイドサイズを検討した方が良いかもしれません。
下はアディダスランニングシューズの横幅比較。
左から、ウルトラブーストBP、アディゼロジャパン5、匠戦6、アディゼロプロですが、匠戦6が異様に幅が狭いです。同じアディダスだからと匠戦をチョイスすると失敗します。
正直、横幅の感覚はある程度統一してもらいたいですね^^;
アディゼロ匠戦6の走行感
実際の走行感ですが、まず重量が増えたといえ非常に軽いシューズですから、足が軽く上がっていく感じは匠戦ならでは。
かつ、様々なアップデートが加わったとことにより着地から蹴り出しでしっかりと粘りつつの反動で前に進めるようになったと感じます。
自身の走力レベルによって、そのシューズの一番心地よい走行速度というものがあります。例えば同じアディダスでもウルトラブーストPBであれば1kmあたり4:50〜5:10というサブ3.5前後の速度が心地よいですし、アディゼロジャパンであれば1km 4:30〜4:50あたり、またアシックスのターサーエッジもアディゼロジャパンと同じく1km 4:30〜4:50あたりのゾーンが走りやすいです。
今回の匠戦6に関して自分の中での心地よい走行速度は、1km 4:10〜4:30前後の速度であり、この速度で走りやすいシューズはナイキのネクスト%と同等クラスだと感じます。
ただし、シューズの特性上、自分の走力をしっかりと使うシューズであることは間違いなく、匠戦6でガッツリと走った後の疲労感的には、
「匠戦で練習したな〜」
という感覚に陥ります。脹脛周りの疲労感など、匠戦履いている方ならわかりますよね。
ナイキのネクスト%も走力を必要と言われるシューズですが、私の中でのネクスト%は「速く走れて疲れづらいシューズ」というカテゴリ。
それに対して、匠戦6は「速く走れるけど疲れるシューズ」という印象です。
雨天時は非常に滑りやすい
雨天時や濡れたアスファルトの上での走行は、予想以上に滑ります。
ジョグペースの速度でも多少の滑りを感じますし、スピードを入れていくと濡れた路面では不安定になります。
DSPの素材がプラスチックからラバーに変更されたことによって、雨天時も滑りづらくなったのではと期待しましたが、全くの逆で滑りやすいです。
匠戦6を履くシーンは、インターバル走やペース走などガチ目の練習時がほとんどですが、濡れた路面では怖いと感じるレベルなので履かない方が良いでしょう。
ぶっちゃけハズレレベルの滑りやすさです。
シューズの耐久性・寿命について
匠戦6の耐久性にも難があります。DSP素材の耐久性が圧倒的に低くすぐにすり減ってしまうということ。これまでプラスチック系の素材からラバー素材に変わったということで、DSPがすり減るのが速くなってしまったのではと感じています。
25km走行後の状態
25km程度の走行で、フォアで着地する部分がすり減っているのが伝わるかと思います。
アスファルトとの相性が悪いのか、耐久性を殺して走りやすさを追求しているのか分かりませんが、25kmでこのすり減り具合は気になるところです。
100km走行後のアウトソールの劣化具合
続いて100km走行後のアウトソールの状態ですが、着地面のDSP素材がほとんど剥がれてしまいました。
この状態になるとDSP素材の意味は無く、ミッドソール素材にて走っている様な感覚になってきますね。
他の部分は全く劣化していないのでもう少し履きますが、耐久性は低いですね。
まとめ・こんなランナーにお勧め
改めてアディゼロ匠戦6のここまで話を整理しますと、以下のような印象を受けました。
- ミッドソール、アウトソール、アッパーなど仕様変更が入り走りやすさは増した
- ミッドソールに厚みが増し、クッショニング性能が上がって柔らかく感じる
- 足を入れづらい反面、走っている時のフィット感は高い
- 反り返り辛くなり強いバネの中で走っているような感覚
- 諸々の素材が強化されたことで、前モデルよりも20-30g程度重たくなった
- スピードを出しやすいが足の疲労度も高い
- 雨天時や濡れた路面では滑りやすい
- シューズ寿命が短い(アウトソールのすり減りが早い)
匠戦6になってよくなった部分も多いですが、気になる部分も多いというのが本音。
足の筋肉をしっかり使うシューズであるため、本番シューズとしては不安が残るものの、インターバル走やレペ、域値走など、ガッツリとスピード練習を行って走力を付けたいときに履いてます。
とは言いつつ、耐久性や雨天時の滑りやすさは本当にマイナスポイント。
同じアディゼロジャパンと匠戦6のどちらかを買うなら、間違いなくアディゼロジャパンを推しますね。
【アディゼロジャパン5】総合力の高さが際立つバランスの良い万能型シューズ
残念ですが、次のアップデートでも同じDSP素材なら購入を見送ります。
以上、「adizero takumi sen 6(匠戦6)」のレビューとさせていただきます。
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