踵から着地すると程よいクッションでしっかりと衝撃を吸収。フォアから入ると強いグリップ力とスムーズな反発で前へと進んでいけるシューズ。
アシックス「ターサーシリーズ」の最新モデルであるターサーエッジ(TARTHER EDGE)です。
ターサーシリーズは1983年の誕生以来、日本人ランナーの足にフィットするシューズを常に目指して開発し続けられた不朽のランニングシューズ。初代ターサーから始まって、今回発売されたターサーエッジはなんと36代目のモデルとなり、常にサブ3を狙うランナーに向けて品質を改良し続けています。
直近のターサーシリーズはターサージール4→5→6とアップデートしてきましたが、今回ターサージール7ではなくターサーエッジとして発売されました。
実際に履いてみると、ターサージール6の後継という感覚ではなく、新しいターサーシリーズが立ち上がったように感じられるほど様々な部分で変更が入っています。
個人的な感覚としてはターサージール6と比較して良くなった部分もありつつ、逆にこれまで気に入っていた部分が削られてしまったところもあるかなという感触。
他のターサーシリーズ(ターサージャパン・ターサージール6)と比較しつつレビュー致します。
目次
ターサーエッジ レビュー
ターサーエッジはサブ3を狙うランナー向けの本格的なレーシングシューズとして、2019年8月に発売されました。シューズコンセプトについてアシックス公式サイトより引用します。
アッパーには、人工皮革で補強したメッシュ構造を採用し、軽量性を追求。ミッドソールには、反発素材であるFLYTEFOAM™ PROPELを採用。
やわらかい履き心地とホールド感に優れるかかと部分には、「虎」と「走」の文字を左右にデザイン。
接地時の安定感をもたらすフラットなアウターソールには、しなやかな屈曲性と推進力のパワー伝達を行うトラスティックを内蔵し、デュオソール意匠は、配置幅と方向を見直すことで、さらなるグリップ力を追求しています。
ウイズタイプはスタンダード。
それでは細かく見ていきましょう。
ターサーエッジのサイズ感・足入れ感
アシックスのランニングシューズの特徴でまず挙げられるのが、シューズの形状が日本人の足に合わせてしっかりと開発していること。アシックスのランニングシューズはこれまでに5足履いていますが、どれも足を入れた瞬間、海外性のシューズとは全く異なる素晴らしいフィット感を感じられます。
今回のターサーエッジも素晴らしいフィット感でした。
なお、アシックスのランニングシューズの中でも銘柄によって少しずつ履き心地が異なるのですが、同社のスピード系ランニングシューズであるターサージャパン、ターサージール6とで比べるとターサージール6に近いイメージがあります。
全体的にしっかりフィットしているけど、キツくはなく指周りには多少の遊びがあり当たる部分もありません。自分の足の一部になっているようなフィット感を得られます。
また、足入れ感の近かったターサージール6とターサーエッジで比べると、若干ターサーエッジの方が同じサイズでも緩く感じます。この差は、ターサージール6の仕様であった中足部の布地のADAPT MESH(アダプトメッシュ)がターサーエッジには採用されていない事から生じる差だと感じます。
私の普段のシューズのサイズは25.5cm、ランニングシューズは26.5cmをチョイスしていますが、ターサーエッジに関しても26.5cmでジャストフィットでした。
ADAPT(アダプト)とは、「適合させる、順応する」という意味。軽い上に自然なフイット感があるので、自分の足と一体化している感が高く、履いててストレスやシューズ形状における違和感を感じにくいシューズに仕上がっていました。
アダプトメッシュは気に入っていましたので残念。個人的にはターサージール6のフィット感の方がが好きかもしれません。
とは言いつつ、実際にターサーエッジを履いてロング走を含め走り込んでいますが、履き心地は素晴らしく、また、指・爪を含め足回りで痛めた部分はありません。
合わないシューズの場合、20kmも走ると爪を痛めたり、皮がむけてしまったりと何らかの外傷が生じますので、この辺りからも自分の足に合っているということを実感できました。
重量
続いて重量ですが、ターサージール6と比較して重量が増えました。
実際に測ったところ、26.5のサイズで「左が189g」、「右が195.5g」。ターサージール6が「162g」・「165g」でしたので、25〜30gほど重たくなった事になります。
もちろんターサージール6とその場で持ち比べたり履き比べれたりすれば重く感じますが、ターサーエッジ単体で履いて走ってみるとフィット感が高いこともあり、履いてて重さを感じることはありません。
ミッドソール
ターサージール6と比べて大きく変わったのがこのミッドソール部分です。
ターサージール6では「Flyte Form」と呼ばれる軽量性を重視した素材が採用されていましたが、ターサーエッジではより反発性とクッション性を重視した「Flyte Form Propel」が採用されています。このFlyte Form Propelにより足が地面に着地した時の力を推進力に変えて滑らかな走りとスピードを生み出すとのこと。
ちなみにFlyte Form Propelを採用する事によって、ターサージール6と比べて重量が増えたとも言われています。軽さではなく、反発性を採用したという事でしょうか。
なお、ターサーエッジでの走り心地についてやわらかく弾むような感覚が何かに似ているなと感じていたのですが、Flyte Form Propelは2019年2月に発売されたメタライドにも採用されている素材でした。
メタライドは長距離を走っても疲れづらいシューズで話題ですが、まさしく私の中でもLSDや疲労抜きランで履くシューズとして大活躍中です。
【ASICS METARIDE(アシックスメタライド)】30km走や3時間LSDを含む150km走ったのでレビュー!疲れづらさは只者じゃない!!
私の中でメタライドのクッション性と反発性はお墨付きで、この性能がターサーエッジにも採用されているのであれば安心できます。
シャンクの形状
続いてシャンク部分の形状変化について。
写真左がターサージール6、右がターサーエッジですが、ターサージール6のシャンクがN字型であったのに対し、ターサーエッジではV字型になりました。
ターサージール6のN字型だと捻れを抑えてくれ安定性が高くなりますが、ターサーエッジでV字型になった事により、N字型と比べ自由度が生まれる形状です。この形状変化によって捻れに対しての自由度を増しているのだと感じます。
デュオソール部分の変更
さて、アシックスのレーシングシューズといえばデュオソール。このテトラポッドのような形をした樹脂製のツブツブによって地面をしっかり噛んでターサーならではのグリップ力を生み出してくれるのですが、ターサーエッジになってこのデュオソールの形状が大きく変化しました。
写真左がターサージール6、右がターサーエッジですが、デュオソールの外側がかかと方向まで伸びています。この位置は一般的な着地場所に対しての配慮がされており着地した瞬間から地面を捉えてくれます。
先日自分の走りを動画で撮影してみましたが、地面への着地時に足が水平に降りてくる訳ではなく、外側から着地して内側に捻るような走りをしておりましたので、少なく自分の走りにはフィットしていることが確認できました。
走行感
ターサーエッジで走りこんでみて感じたのが、これまでターサーはサブ3ランナーが履く玄人向けシューズという印象があったにもかかわらず、私のようなサブ3.5ランナーでも十分に履きこなせた事に驚きを感じました。
例えばアディダスのアディゼロ匠戦やターサージール6などは、ハーフまではなんの迷いもなく履けるシューズですが、フルマラソンで履こうとすると私レベルではかなり悩みます。これらのシューズは軽量化を重視しており、その分クッション性は弱くなっていますので長時間の走行になると足に疲れが蓄積されやすいためです。
私はフルマラソンで履く予定のシューズで30km走を行なって実際のレースで使う使わないの判断をしていますが、ターサーエッジを履いて30km走ってみたところ、8月ということもあり体力的にはかなりダメージを受けましたが足は終わっておらずまだまだ走れる状態でした。
5:00/kmイーブンを意識して走り、最後まで落とすことなく走れています。
この走行では、ヒールストライクにより踵から落としてターサーエッジのクッションとバネを活かして走らせてもらうことを意識しましたが、ターサーエッジの持つクッション性が足の疲れを軽減に役立っている事が実感できました。
また、フォアフットで走った際はデュオソールの強いグリップ効果によりしっかりと地面を噛みながら走れるような感覚があります。このグリップ感はターサーシリーズならではの安心感がありますね。
ちょっと余談ですが、ソックスはタビオのレーシングラン・プロとの相性が非常に良いと感じました。
ターサーエッジならではの地面に噛み付くようなグリップ感と合わせ、タビオレーシング・プロは足とソックス、そしてソックスとシューズ間を完全にグリップを効かせますので、足→ソックス→シューズ→地面まで一気通貫して自分自身の足で走っている感が半端ありません。
【TABIO(タビオ)レーシングラン・プロ5本指】履き心地・通気性・グリップ力のバランスが素晴らしい本命ランニングソックス
ターサーエッジの耐久性
300km走行時の劣化具合
最後に気になるのがターサーエッジの耐久性。300km走ったあとの劣化状態も載せておきます。
私の走り方として主はフォアフットになりますが、最初の着地ポイントである両足甲の外側のデュオソール(黒い部分)が剥げはじめています。
逆にかかと部分は着地時間が少ないこともあり、ほとんどすり減っていません。
まだ履いていてグリップが弱くなった感じは一切ありませんが、一般的なレーシング用ランニングシューズの寿命が300〜500km前後と考えると、同等の耐久性だと考えて良いでしょう。
500km走行時の劣化具合
外観的にはあまり変化が無いように見受けられますが、ソール部分は300km走行時と比べだいぶすり減りが目立つようになりました。
クローズアップして見てみると、
着地部分のデュオソールが見事にすり減ってなくなってしまいました。中央部分のディオソールがなくなるのも時間の問題です。
かかと部分はあまり使ってないこともあり、まだ多少の溝が残っています。
雨天時のグリップ力
ターサーエッジを履いていてもう一つ素晴らしいと感じたのが、雨天時のグリップ力です。
どのランニングシューズでも、購入して間もない頃は雨天時路面が濡れていても一定のグリップ力がありますが、そのグリップ力は走行距離によって落ちていきます。
しかしターサーエッジは、500km走ってディオソールがほぼすり減っている状態であっても、一定のグリップ力を担保できていることに驚きました。これだけすり減っているのに関わらず、雨天時の路面で滑る感覚がないのは凄いです。
幅広い練習で使えるバランスの良い一足
ターサーシリーズ本来のスピード性能と共に、これまでのシリーズラインナップと比較するとクッション性も高まり、長距離にも十分対応できるシューズに仕上がっています。
ランニングシューズのカテゴリとしてはサブ3を狙うランナー向けとされていますが、サブ3.5前後の実力を持つランナーであれば十分に履きこなせるシューズです。これまでサブ4向けシューズを履いていた方のステップアップシューズとしてもちょうど良いですね。
また、バランスが偏っていないシューズですので、普段のジョグ、スピード練習、ガチ目な長距離練習など様々なシーンで使えます。2020年7月現在、コロナの影響でレース予定も見えませんが、発売から1年が経過して値段もこなれてきていますので、普段の練習用シューズとしておすすめの一足です。
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